T`s Guitar 代表 高橋氏 インタビュー

*まずはプロフィールを教えて下さい。
長野県内の某ギター工房にてこの業界に入り、ひと通りの事を覚えました。そして小売店勤務の後にアメリカでのリペアの話があり、個人として渡米する事になりました。帰国後は兄が85年から始めていたT`s Guitarが忙しくなっていた事もあり、86年頃から一緒に仕事をするようになり有限会社として新たにスタートしました。
最初から大きくやろうというつもりは全くなくて、2人だけで始めたんですけど、次第に大きくなっていったんです。当時はコンポーネントギターが流行っていた時代ですので、小売店さんのオリジナルブランドなど作ることも多かったですね。オリジナルギターについては立ち上げから5年経ったら作ろうと考えていたのですが、実際には10年以上後になってしまいました。また、営業担当のような役回りもしていたので、次第にコネクションが増えていきOEMの依頼も増えていきました。Taku Sakashitaさんとは
一時期ですが「Jazz Guitar Degigns」ブランドの製作をさせていただきました。
オリジナルモデルを最初に作ったのが2000年頃なんですが、しばらくは年間20本程度しか作っていませんでした。2008年頃にa2cさんが動画でT`sGuitarを使って弾いているのを知り、こちらからコンタクトを取ったのがきっかけでお付き合いが始まったんです。その動画を見た方々がT`sGuitarに興味を示して下さり、このギターが欲しいという感じで広がっていきました。

*どのような方がユーザーになっていますか?
以前は40代、50代が多かったのですが、ここ3、4年くらいから急に20代、30代の方が増えてきました。多分、ツイッターなどのSNSの影響ではないでしょうか。購入したお客様がギターの画像をSNSにアップして、それを見た方々からさらに広がっていったんだと思います。SNSは口コミで宣伝効果が大きいのですが、失敗してしますと悪い評判も広がってしまいます。幸い今のところは大きな失敗はないと思います(笑)。
ユーザーさんとしてはネット系のa2cさん、Godspeedさん、大和さん、アコースティックでは吉川忠英さん、住出勝則さんなどスタジオや音楽制作されている多数の方がみえます。 最近ではシングライクトーキングの西村智彦さんもユーザーになっていただきましたが、西村さんのお仲間の間でも好評みたいです。

*T`s Guitarの特徴は何でしょう?
2000年くらいにホローボディのArcモデルを作ったのが最初で、他には無い物を作りたかったんだと思おいます。レスポールは音は素晴らしいけど自分にはごつくて弾きにくい物だったんです。ですから、持ちやすくて弾きやすくて弾き始めたら止まらないギターを作りたいという思いで作っています。Arcは基本的にチェンバードボディにしていますので、総重量で平均3.5kgくらいになっています。ローポジションはやや細めにしてネックエンドはやや幅広にしています。インスパイヤされたのはJames TylerやTom AndersonやPRSや昔のIbanezなどで、私自身はハードロックやフュージョンやジャズも好きですのし、幅広いジャンルで使っていただきたいです。

*ピックアップもオリジナルでしょうか?
そうですね。Arcモデル、DSTモデルにはオリジナルで定番の物を用意してます。アルニコ2を使ったPAFタイプ(DH-250)、PAF系だけどアルニコ4で巻数が多いDH-450、アルニコ5を使ったDuncanのJBタイプ(DH-560)というのがあります。シングルですと、モダンなタイプ(DS-592)とビンテージ系(品番なし)があります。持込みになる場合もありますが、お客様のご要望があれば別メーカーのピックアップも載せることが出来ます。

*現在は何本くらい作られているのですか?
セットネックのArcモデルに関しては、工程の多さと難しさもあり現在は月6本くらいでボルト・オンのDSTモデルは10数本くらい生産しています。

*製造工場や工房が多い土地柄か、他の工場や工房との繋がりが多いと聞いたことがあるのですが?
そうですね。当時からネックを作るのが得意とか塗装が得意とかそれぞれの分野に特化した工房がありますので、現在でもそういう所に依頼して自身で組み上げをしている工房やブランドもいくつかあります。

*T`s Guitarに関しては如何なのでしょうか?
クリアー塗装以外はこちらで行います。クリアー塗装に関しては基本的にウレタン塗装をするのですが、その際に水研バフ作業が必要となります。自社で行うとものすごく時間が掛かるんですね。ですので信頼できる昔から付き合いのある塗装専門業者に依頼しています。専門だけあって仕事も早いですし、コストも抑えられますし、こちらの細かいリクエストにも応えてくれています。

*木材はどのように入手していますか?
国内の材木業者から買うこともあります。3A~5Aメイプル材などは随分前からアメリカの業者に手当たり次第メールを送って、サンプルを送ってもらった上で買っていたのですが、ここ10年くらいは3社くらいに絞って仕入れています。たまに「PRS」「Ernie Ball」とか書かれている物も紛れ込んでます(笑)。

*T`s Guitarのボディやネックに使用してるホンジュラス・マホガニーは、近年さらに入手が難しくなっていると聞いていますが如何でしょう?
実は去年大騒ぎになりました。いつも国内の業者に依頼していたのですが、「もう手に入らなくなった」と連絡があったんですよ。当社の生産ペースであれば何とかなりそうだと言われていた事もあり焦りました。そこから慌てて国内にある物を買い漁り、さらにはたまたま探し当てた正規ルートで海外から大量に仕入れましたのでしばらくは大丈夫でしょう。

*大量に仕入れるとなると重量などの個体差が大きくなってしまいそうですが?
近隣の木材業者であれば選定して仕入れられますが、海外や遠方ですとなかなかそうはいきませんので、どうしても重さなどのバラつきが出てしまいます。ただ、OEMで供給しているメーカーによっては重めの木材を指定したり、軽めの木材を指定したりしますのでバランスよく供給出来ています。お客様がT`s Guitarで注文される時でも、ベースの方は重めが良かったり、ギターの方は軽めが良かったり、はたまた反対だったりとか様々です。まとまった量の木材を仕入れる事でコストも抑えられますし、お客様がオーダーする時の選択肢も増えます。これがオーダーメイドだけですと、仕入れる木材の量も限られてしまいますので選択肢も減ってしまいます。OEM生産を行っている強みと言えますね。

*作る上で気を配っている事は何でしょうか?
特にネック材や指板材の乾燥には時間をかけています。ネックを作る際にも粗加工した後に1、2ヶ月乾燥させ、さらに加工を施すなど約3ヶ月ほど掛けて仕上げていきます。ネック材の質や使い方やトラスロッドの仕込み方でネックの鳴りや強度も変わってきます。強度の低い動きやすいネックですと、ネックが弦振動の支点にならないので弾いた時のレスポンスが弱くなりますので、そうならない様に心掛けています。
T`s Guitarではマホガニーネックとフレイムメイプルネックにはカーボンを埋めて強度を上げています。というのも、以前からリペアなどでボディとのジョイント部分と5フレット付近でネックが反って波打っている物を多く見てきましたので、なるべくそうならない様に手間を掛けてでも作業します。幅広のメイプル・ネック材が手に入った時は、木目を気にしなければ2本分は作れるのですが、ベストな場所で1本分だけ使うという事もします。イマイチな部分を使うとネックトラブルの原因になったりするので、もったいない使い方ですがそうしています。
OEMの物でもそうですが、後になってネックの反りとかでリペアで戻ってくるととても残念な気持ちになるんです。ですから、出来るだけリペアする事にならない様「戻ってこないでね 」っという気持ちで作っています(笑)。

*そういう所が現在の評価につながっているんですね!?
以前はリペアの仕事がかなり多かったのですが、依頼を受けるのはまずネックのトラブルなんですね(ネックの反りとかフレット浮きとかフレット形成とか)。ですので、ネックさえちゃんと作っていればリペアに来ないんだろうなと思っていました。自社製品ではそうならない様に心がけています。フレットの打ち方にしても浮いてこない様に押し込んでいますので、擦り合せも最低限に抑えられます。
ネックのリペアに限らず、「このようなトラブルにならない様にしよう」という感じで生産に反映させたりもします。工場などですと作るだけになってしまい、それ以外の事を知るのが難しいと思うんですが、リペアを並行して行う事で悪い状態のギターを見てフィードバックさせていくというのが出来ますし、それはとても大事なことだと思います。

*最後に一言お願いします。
生産ペースが少ないので店頭で展示していただける本数が限られてしまいますが、とにかくお客様に一度弾いて頂きたいです。


ありがとうございました!!


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